(東京、2025年11月18日)―高市早苗首相率いる新政権は、人権を外交政策の軸に据えるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは2025年11月6日付の書簡で述べた。日本政府は、アジアそして世界における民主的統治と法の支配を率先して促進し、人権を守る決意を示すべきだ。
女性初の総理大臣である高市氏は、10月21日に就任した。日本は、主要国首脳会議(G7)の唯一のアジアの国として、カンボジア、中国、ミャンマー、北朝鮮などで基本的人権と自由を推進する重要な役割がある。日本政府は長年、「二国間対話や国連など多数国間フォーラムへの積極的な参加、国連人権メカニズムとの建設的な対話を通じて、世界の人権状況の改善に向けて取り組んでいる」と公言している。
「日本政府は長年、人権外交を掲げてはきたが、それを真に行うための十分な行動を取ってきていない。」とヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は述べた。「高市首相は、アジア内外の人々の安全と幸福のために不可欠な、人権を尊重した統治の促進のために必要な政策を、速やかに導入すべきである。」
新政権が人権を促進するために導入すべき重要な政策は複数あると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。日本政府はまず、国外の人権侵害者に対象限定制裁を科すことを可能にするグローバル・マグニツキー法を制定するべきだ。日本は、マグニツキー法を持たないG7唯一の国である。
また、日本政府は企業の人権・環境デューデリジェンスを義務化する法律を制定し、グローバル・バリューチェーンにおける強制労働、児童労働、セクシャルハラスメント、有害物質への暴露、組合活動への報復、低賃金などの人権侵害に対処すべきだ。加えて、強制労働や森林伐採を伴う手段で生産された商品の輸出入を禁止する法律も制定すべきだ。
さらに、日本政府は国際司法(インターナショナル・ジャスティス)と法の支配に対する支持と決意を示し、ジェノサイド条約に加入すべきだ。また、米国政府の国際刑事裁判所(ICC)に対する制裁を公に非難し、これに対処するための具体的な措置を取り、ICCに必要とされる資金等のリソースを提供するなどして、ICCへの強い支持を公に表明する必要がある。
日本の人権外交における重要な優先事項として他に、中国政府などによる国境を越えた弾圧(トランスナショナル・リプレッション)に対する公の非難、難民や社会的脆弱層への緊急人道支援と対外援助の増加、そして人権活動(human rights defenders)と開かれた市民社会(open civic space)を直接対外支援するプログラムの創設などが挙げられる。
最後に、日本政府は、特にアジアを中心に、世界各国における主要な人権問題にも積極的に取り組むべきだ。中国政府に対しては、新疆ウイグル自治区での人道に対する罪、チベットの強制的な同化政策、そして香港での自由の剥奪など、悪化する弾圧を止めるよう求める必要がある。他にも、ミャンマー軍事政権による今回の総選挙の実施に対して他国とともに懸念を表明し続けること、そして表現・報道・平和的な集会・結社の自由に対する著しい規制を解除するようカンボジア政府に要求することなどが日本政府には求められている。
「日本の新たな指導者として高市首相には、日本を国内外で人権における世界的なリーダーへと導く潜在力がある。」と土井は述べた。「激動する地政学的状況の中、高市総理は人権外交の真の実現に向けて新しい法律や政策を導入すべきだ。」